テナント賃料増額請求につき完全売上歩合賃料制から固定及び歩合の併用型賃料制への変更を否定した事例

駅ビルの運営会社がテナントに対し、店舗の賃料の増額と、完全売上歩合賃料制から固定賃料と歩合賃料の併用型賃料制(以下「併用型賃料制」)への変更を求めた事案において、 特段の事情のない限り、賃貸人の一方的な意思表示により完全売上歩合賃料制から併用型賃料制への変更を請求することはできないとした事例

(広島地裁 平成19年7月30日判決 一部認容一部棄却 確定 判例時報1997号 112頁)

 

【判決】

完全売上歩合賃料制であっても、そのことだけで直ちに借地借家法32条1項の適用が否定されるわけではなく、要件を充たす限り当事者はその賃料の増減を請求できるものと解される(最高裁判決 昭和46年10月14日 判時644-51)。

しかし併用型賃料制においては、 売上が一定水準に満たない場合であっても一定の賃料水準を確保できる一方で、売上が一定水準を超えた場合にはその超えた部分につき歩合賃料の支払を受けられることから、完全売上歩合賃料制に比べて、一方的に賃貸人に有利なものであると考えられ、賃貸借契約締結後の経済事情の変動等によって併用型賃料制でなければ相当賃料への是正がなし得ないとか、当事者間にその後の賃料改訂に当たって完全売上歩合賃料制から併用型賃料制に変更する旨の合意がされていたなどの特段の 事情がない限り、賃貸人が一方的な意思表示により完全売上歩合賃料制から併用型賃料制への変更を求めることはできないと解するのが相当である。

本件では特段の事情を認める に足りる事情ないし証拠はなく、Yの一方的な意思表示によって併用型賃料制への変更を求めることはできない。

 

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