緊急輸送道路沿道建築物の耐震化条例による建物解体を理由とする賃借人に対する明渡請求が認容された事例

緊急輸送道路沿道の賃貸建物につき、耐震化条例に基づく耐震診断により耐震性に問題があることが判明し、賃貸建物を解体する必要があるとして、賃貸人が賃借人に対し、立退料の支払いを申し出て、建物賃貸借契約の更新を拒絶し建物の明渡しを求めた事案において、賃貸人の更新拒絶理由は借地借家法28条の正当事由に該当するとして、裁判所の認める3,000万円の立退料の支払いを条件に貸主の明渡しの請求を認容した事例

(東京地裁 平成28年3 月18日判決 認容 判例時報2318号31頁)

 

【判決(抜粋)】

⑴ Yは長年本件建物にて営業し、5店舗全体売上げの約3割程度を占めていることからも、本件建物を使用する必要性は高いというべきである。他方で、①耐震性に問題がある本件建物で営業することは、顧客にも危険な面があること、②本件建物の近隣において代替物件が存在しないとは認めがたいこと、③ 本件建物以外の4店舗を経営していること、 ④本件建物を立退くことによる損失は立退料によって一定程度補えることなどを考慮すると、営業継続が困難となるとは認めることはできない。

また、本件建物の耐震診断結果の信用性は高いというべきで、Ⅹが本件建物に自ら入居の上、使用する必要性はないとしても、建物所有者及び賃貸人として、耐震性に問題がある建物をそのまま賃貸することは問題であり、かつ補強工事しても一時的な安全が保持されるに留まり、高額の費用を要する補強工事を実施することは合理性を欠き、かつ現実的ではなく、本件建物を取り壊そうとすることは、正当な理由があるというべきである。

以上によって、本件建物の賃貸借を継続させることは相当ではないというべきであるが、Yの建物使用の必要性や、本件建物の現況等に照らし、Ⅹに裁判所の相当と認める立退料を支払わせることにより、更新拒絶に係る正当事由が具備されるというべきである。

そして、Yは、本件建物部分に係る賃借についての一定の権利または利益を有していることを考慮し、かつ、本件に現れた一切の事情を考慮し、立退料の金額としては3,000万円とすることが相当である。

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