1.サッポロ不動産開発・恵比寿ガーデンプレイスの歴史
サッポロ不動産開発株式会社は、サッポログループの不動産事業を担う企業として1988年に設立されました。当初は星和不動産管理株式会社としてスタートし、ビール工場閉鎖後の跡地開発を担う役割でした。特に注目されるのが、恵比寿ガーデンプレイスの誕生です。
恵比寿ガーデンプレイスは、1887年から約100年続いた旧サッポロビール工場の跡地を活用し、1994年10月に新たな都市空間として開業しました。再開発計画はバブル崩壊など困難の中で着工されましたが、ヨーロッパの街並みを意識した設計、広場や石畳、豊かな緑などを特徴とし、単なる複合商業施設ではなく「まちづくり」を意識したプロジェクトとして大きな話題となりました。「ガーデンシティ」と「マーケットプレイス」両面をもつ街の名称は、地元や都心部の需要を捉えた象徴的存在となりました。
サッポロ不動産開発は、その後もオフィスビル、商業施設、住宅など多様な不動産開発を推進し、グループ再編や合併を経てサッポログループの中核不動産会社へと成長。恵比寿ガーデンプレイスは、都心のブランド複合施設として「文化」「暮らし」「仕事」が融合する空間となり、恵比寿エリアのブランド価値向上に大きく寄与してきました。
近年は施設のリニューアルによる価値向上策も施され、築30年を迎えてなお、商業・オフィス・住宅のトレンドを先導する都市空間として国内外から高く評価されています。
2.売却動向と三者について
2025年8月現在、サッポロホールディングスは完全子会社であるサッポロ不動産開発の売却プロセスを進めており、恵比寿ガーデンプレイスなど資産価値4,000億円規模の案件が注目されています。
売却候補先として現時点で絞り込まれているのは、以下の3陣営です。
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ベインキャピタル・東急不動産グループ
施設ブランド維持・地域活性化を重視し、「まちづくり型」の不動産運営力が魅力。施設の長期的な価値向上に最適な候補。 -
KKR・PAG・野村不動産グループ
資産運用・再生投資で安定した収益を狙い、リノベーションや多用途展開による将来価値創造へ積極的。大手ならではの総合力が強み。 -
米国投資ファンド(ローンスター等)を中心とするファンド連合
グローバル流動化・事業再編力で東京の一等地資産を即時かつ柔軟に活用可能。資産価値アップや新しい用途開発に挑戦する可能性も高い。
今回の売却プロセスでは、それぞれのグループが持続可能な事業運営・資産価値最大化の戦略を提示しており、年内にも最終売却先が決定する見通し。恵比寿ガーデンプレイスのブランドと資産運用方針が今後どう設計されるか、都心部都市開発の方向性にも関わる局面となっています。
3.案件のまとめ
サッポロ不動産開発と恵比寿ガーデンプレイスは、サッポログループの創業の歴史と都心開発の象徴的存在として国内不動産の核心を担ってきました。現在の売却案件は4,000億円規模と巨額であり、上記3陣営による争奪戦が繰り広げられています。売却先が決まれば、施設の運営方針や地域の価値にも新たな変革がもたらされる可能性が高いです。都市資産再編の転換点として、不動産市場全体にも広い影響を及ぼす注目案件です。
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