さて、皆様は「一物一価の法則」をご存知でしょうか。
一物一価の法則とは、経済学における概念で「自由な市場経済において同一の市場の同一時点における同一の商品は同一の価格である」が成り立つという経験則を言います。
これを簡単に解説すると、缶ジュースを購入しようと思った場合、自動販売機では稀に100円の自動販売機も存在しますが、基本的には120円で売られているはずです。
つまり、缶ジュース一本という一物の価値は120円(一価)ということになり、一つの商品には一つの価格しか存在しないということです。
これを一物一価の法則と言います。
しかし、不動産にはこの法則が当てはまりません。
なぜなら、同じ不動産はこの世に存在しないからです。物理的には住所が同じ一軒家はありませんし、二世帯などで同じ住所だとしても日当たりや室内の間取り、隣接環境までが同じということはあり得ません。
他にも土地の場合、面積、形状、道路付けが物件ごとで異なり、
さらに建物であれば、日照、通風、間取り、面積、外観、建物のグレード感など、全く同じものは存在しません。
また得られる情報量も、不動産会社間、個人間、では偏りが生じます。
したがって、各不動産の個別性や情報量等の諸条件から、不動産価格には一物一価の法則が成り立たないといわれています。
さらに、土地価格は一物五価(いちぶつごか)と言われることがあります。
・・・これはどういう意味でしょうか。
解説をすると、一物五価とは一つの土地には5つの価値がある、ということを意味しています。
この言葉は不動産特有の世界に存在する言葉であり、一物一価の法則のように経済学上の定義などは存在しません(笑)
では、5つの価値(価格)について、具体的に説明します。
1.鑑定評価額
不動産鑑定士が判定した価額。「時価」が多いが、依頼目的により資産価値としての価格や、早期売却に伴う価格もあり、鑑定評価額の全てが「時価」には該当しない。
2.実勢価格
「時価」といわれるもの。実際の取引価格や販売価格を基に査定。
3.公示価格
土地鑑定委員会(国交省の中にある1組織)が毎年1月1日時点の土地を算定した価格。一般の土地取引の指標とされている。
4.相続税評価額
国税庁が公表するもので、毎年1月1日時点の価額。相続税算定の基礎となる価額であり、概ね時価の80%の価値とされている。
5.固定資産税評価額
地方自治体が固定資産税を徴税するために固定資産税算定の基礎となる価額である。3年に1度、前年1月1日を基準にして公表され、概ね時価の70%の価値とされている。
以上、土地価格は必要に応じて上記のような5つの価格が存在しますので、不動産価格は一物五価と言われることになります。
そして、この全ての価格は不動産鑑定士が判定しております。
1.2.は鑑定評価として、
3.は地価公示法に基づく標準地の鑑定評価として、
4.は相続税課税のための路線価の評価として、
5.は固定資産評価員業務として判定します。
『要説不動産鑑定評価基準と価格等調査ガイドライン』(2015)では、
一般の人々にとっては、不動産の適正な価格はいくらかということを取引価格等を通じて判断することは著しく困難であり、高度の専門的知識と豊富な経験とそれに基づく的確な判断力とを有する不動産鑑定士による適正な鑑定評価活動が必要となるものである
と規定しています。
以上から、不動産鑑定士は土地を含む不動産の専門家です。
不動産のことで困ったことがありましたら、お気軽に当事務所までご相談ください。
mail:maruyama-res-office.jp
tel:090-9300-9694
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