はじめに
相続財産のなかで不動産が占める割合は非常に大きく、その評価次第で「誰がどの程度受け取るか」や「相続税額」が大きく変わってきます。そのため、不動産鑑定を行うことで、遺産分割や税務リスク対策、家族内トラブル防止など多くのメリットが得られます。
1. 公平・円滑な遺産分割のための客観的根拠
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相続財産の中で最も価値が大きいケースが多いのが不動産です。不動産は現預金や有価証券と違い「定価」がなく、評価が分かれやすい資産です。そのため、相続人の間で「価値」の捉え方や分け方について意見の食い違いが生じやすいです。
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不動産鑑定士による鑑定評価は、国家資格者が国の評価基準に基づき「現時点での客観的な時価」を算定するため、協議や調停でも根拠となり、相続人全員が納得しやすくなります。
2. 家族間トラブルの予防
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不動産の価値算定を現実的に納得できる水準で行わなければ「自分の取り分が少ない」「評価が高すぎるor低すぎる」といった不満やトラブルに発展しやすくなります。
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不動産鑑定士が専門知識に基づき第三者的に出した価格を全員の基準とすれば、感情的な揉めごとを未然に防ぐ効果があります。
3. 特殊・複雑な不動産のケース
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市場に流通しにくい物件(例:農地・山林・私道、賃貸マンション、工場、共有持分)、共有持分や借地権付き土地、法規制条件の特殊な土地――こうした場合こそ、個別事情を加味して時価を正確に算定できるのが不動産鑑定士です。
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不動産会社の査定は売却前提であり、しかも担当者や会社によりばらつきがありますが、鑑定士による評価は「相続時の遺産分割協議書添付資料」「税務争い時の証拠」としての効力も持ちます。
4. 代償分割や換価分割の根拠
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一人の相続人が不動産を相続し、他の相続人には現金を支払う「代償分割」や、現物or売却後の現金を分け合う「換価分割」では「正確な評価額」に基づかないと著しい不公平が生まれます。
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この場合でも鑑定評価が基準値となり、後から争いに発展した場合でも訴訟・調停における説得力を担保します。
5. 事前対策・財産承継の最適化
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生前対策(相続税のシミュレーションや事前分割計画)の場面でも、専門家の鑑定で「実勢に即した資産評価」をしておけば、将来のトラブルや過大な納税リスクを軽減できます。
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また、法人移転や譲渡、贈与対策でもきわめて有用です。
6. 法的・専門的な安心感
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不動産鑑定士は市場動向・法令・税制など幅広い知識を持った国家資格者です。そのため、鑑定評価書は銀行など金融機関、税務署、裁判所いずれにも公的資料として通用します。
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相続手続きでの「迷ったときの道しるべ」や、「問題発生時の盾」となってくれる存在です。
まとめ
相続時に不動産鑑定を活用することは、「相続人全員が公平に遺産を受け取る」「感情的なトラブルや高額な納税リスクを回避する」「複雑な物件も正確に評価できる」など多数のメリットがあります。費用はかかるものの、専門家の鑑定書という“客観的な根拠”が、円滑で後悔のない相続を支える最大の武器となります。
相続財産に不動産が含まれる場合は、ぜひ一度不動産鑑定士への依頼・相談を検討することをおすすめします。
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