賃貸借契約当初の当事者間の特殊事情により賃料が著しく低額に設定されていた建物賃貸借契約につき、賃貸人が借地借家法32条の賃料増額請求権を行使した場合において、増額請求権行使時点の適正な新規実質賃料額と従前の約定賃料額の中庸値をもって同条の相当賃料額とされた事例
(東京高裁 平成18年 11月30日判決 一部変更 一部棄却 上告 判例タイムズ1257号314頁)
【判決】
Xの増額請求時点における適正実質賃料額と従前賃料額との間には倍以上の大きな乖離が存在するところ、賃貸人と賃借人間の個人的な特殊事情が消滅したとはいえ、直ちに賃料額を一般的な水準にまで増額させることは相当でなく、公平の観点から、その中庸値をもって相当賃料額と認めるのが相当である。
また、共益費の額は、賃料と比較して実費的性格が強く、他の賃貸人が負担する額までこれを増額させることが相当である。
よって、Xの賃料増額請求権行使により、 平成15年10月以降、右相当賃料額に増額後の共益費の額を加算した額として、Y1賃貸部分については月額賃料325万円余(共益費込み)、Y2賃貸部分については月額賃料11万5千円余に増額されたものというべきである。
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