賃貸人から賃貸借契約を解除するには、賃借人に対して期間満了の1年前から6ヶ月前までの期間に契約の更新を拒絶する旨の通知を送る必要があります。
だからといって「この請求を受けた賃借人は契約更新されない」ということはありません。
なぜなら、賃貸人にこの請求が認められるには「正当事由」が必要になるからです。
したがって、この「正当事由」が認められると賃貸人の要求が通ることになりますので、賃借人の契約は更新されないことになります。
では、この「正当事由」とはどのようなものでしょうか。過去の判例でこの「正当事由」が争点となった裁判がありますが、そこでは「正当事由」は次のように定義されました。
「家主と借家人双方の利害関係その他の諸般の事情を考慮し、社会通念に照らし妥当と認むべき理由を借家法一条ノ二の『正当の事由』というもの」
(最高裁・昭和29年1月22日判決・判例時報20号)
つまり、「正当事由」の有無は、次のような視点から判断されることになります。
・賃貸人の事情
・賃借人の事情
・その他契約関係から生じた事情などの一切の事情を考慮し、かつ社会通念に照らして妥当と認められるもの
なお、この賃貸人及び賃借人の事情は契約により多種多様であり、画一的な指標がありません。実際の裁判でも正当事由の有無の判断にあたっては、裁判官個々の考え方により差異が生じております。
もっとも、近年の流れとしては「立退料」を支払うことで、賃貸人はこの「正当事由」を補完する機能を有するようになりました。(最高裁・昭和27年3月18日判決)
つまり、賃貸人が更新拒絶をしたい場合には、賃貸人は立退料を支払うことで「正当事由」が補完され、更新拒絶の請求が認められる可能性が高くなる、という訳です。
この見方を変えると、賃借人は立退料を貰うことができるということになります。
したがって、下記のように立退料が出ない場合を除き、立退料の話が一切ないにも関わらず更新拒絶の通知が届いた場合には、賃借人は賃貸人に対して立退料を請求することが必要です。
なお、立退料が出ない場合もありますので注意が必要です。以下、立退料が出ない場合を列挙します。
⒈一時使用のための借家契約の場合
これは借地借家法が適用されず、民法上の賃貸借が適用されることになるからです。民法上の賃貸借が適用されると契約の解除には「正当事由」が不要になります。
あくまでも「正当事由」の有無は特別法である借地借家法上での規定となります。
⒉定期建物賃貸借契約の場合
この契約では契約締結時に更新がなされない旨の承諾を賃借人が既にしているからです。定期建物賃貸借契約と認められるにも要件は必要ですが、この要件を満たしている場合には立退料は請求できません。
⒊賃借人に債務不履行がある場合
賃借人に賃料滞納、無断転貸、用途変更、などの契約違反が認められる場合には、賃貸人は信頼関係が破壊されたものとして契約を解除できます。
ただし、債務不履行が認められるには、この程度が問題になります。
例えば賃料滞納であったとしても1〜3日程度の遅滞、1ヶ月程度の滞納では直ちに債務不履行があると認められる可能性が低いです。
実務上では、最低でも3ヶ月の滞納が生じている必要があると言われておりますので、3ヶ月以上の滞納がある場合には立退料が生じる可能性は低いものと考えられます。
通常、上記の1〜3以外であれば、立退料は発生します。
このような場合、立退料が幾らになるのか、またどのように交渉を進めたらいいのか等のお悩みがございましたら、当事務所までご相談ください。
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